続いて光 いくつもの

2021-01-01から1年間の記事一覧

「映画フィッシュマンズ」

フィッシュマンズのドキュメンタリーがこないだやってて、塚口サンサン劇場まで観にいった。 小嶋さんが「たとえばLONG SEASONとか…あの曲におれの居場所はないよね」って言ってたのが印象的だった。 一方でLONG SEASONまで着いていけた柏原さんは「佐藤が死…

精読・『飼育する少年』④

一年半ほど、『飼育する少年』を中心にして物事を考えてきたところがある。 突然だけど、私の中の『飼育する少年』にいったんの結論が出た気がした。それは 私たちが生きてきた大衆社会において、少年が自分の人生に目覚める 物語なのだということだ。 内山…

内山節『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』

この人の本、だいぶ面白い。私が思っていたけど言葉に出来なかったことを書いてくれていて、ああそういうことだよなってなる。 他の著作も読んでいる最中なのだけど、取り急ぎ書いてみた。 私がずっと考えてきたことの一つは、自然に戻りたいということだっ…

山田詠美『晩年の子供』

すごく面白い本だった。すべての短編がどこかで繋がっていて、ひとつの世界観になっている。 一番感じたのは、著者のすべてを見透かしたような、物悲しくて空恐ろしい、恋と人生に対する眼差し・洞察だった。 「花火」での、清らかな恋とか言ってるものこそ…

宮内勝典『南風』

「あの戦後の貧しい一時期、この土地の空間はただ均質にひろがっているのではなく、嶽山を中心にして一つの同心円をえがいていたような気がする。その円のなかで人々が暮し、きちがい豊がどこかをひた走り、女郎たちが化粧の仕上げを急いでいた。そして本坊…

薄井ゆうじ「夜の遮断機」

『十四歳漂流』という短編集の最初が「飼育する少年」、2番目が「夜の遮断機」だ。 どちらも20ページほどの短編だが、薄井ゆうじの最も優れた作品と思う。 「夜の遮断機」はいつかこんな小説を書いてみたいと思わせる作品だ(そう思わせられるということは、…

岩橋邦枝『逆光線』、田山花袋『蒲団』

逆光線というタイトルに反骨精神を感じる。これまでの価値観を「逆」にするという意志を感じる。 不倫関係を、初めは男の目線に沿って語られる。途中から「逆」になり、女の目線に沿うようになる。 女性の「主体性確立」というテーマがさりげなく語られる。 …

フィツジェラルド『グレート・ギャツビー』

・戦間期の小説という感じ ・文章が上手い、人物は軽い ・フィツジェラルドが「良い」と思ったものは何か? ①戦間期の小説という感じ ずっと夜の場面ばかりなこの小説。上級国民たちの豪華絢爛なパーティを描いた作品でありながら、登場人物たちには暗い影が…

孤独について

しばらく本を読む量が減っていた。あるいは読んでも、感想を言葉にするということが出来なかった。どうしてなのだろう。私の意識や無意識は1日毎に反応するのではなく、数週間や数ヶ月、あるいは数年という単位でひとつの気分を作り上げていくものらしい。 …

精読・『飼育する少年』③

私の中にはもう一人、子どもの私がいる。世の中を渡ってコミュニケーションができる今の私はいわば「渉外」係だ。誰もいない場所に小さくなってメソメソしている子どもの私が、きっとまだ本体だ。 そいつは「飼育する少年」の少年に近い。そいつの存在を認め…

一周年。近況。

一年が経ってこのブログの役目は終わったのかもしれない。これを書くことで私はずいぶんと前に進めた気がする。 すごくいい一年だったし、色んなことがあった。具体的に言うと平凡かもしれない。 ・彼女と別れた ・薄井ゆうじに小説の添削をしてもらう講座を…

中上健次『枯木灘』

薄井ゆうじへの課題小説3作目を送り、講評が返ってきた。 以前指摘されたことは、再度指摘はされなかった。 でもとても分かりにくい小説になってしまっていたっぽい。 少し自覚はしていたし、指摘されて尚更、あーそうだなとなった。 前回指摘された「原稿用…

魯迅『祝福』

の映画を見た。小説は読んでない。 京都市近代美術館で3ヶ月に一度映画をやっていて、520円で常設展まで入れる。 前々回の「魚影の群れ」、前回の「牝犬」、今回の「祝福」ととても良かった。 1950年代の中国映画。 夫を亡くした女性が、妻を欲しがってる男…

清水博子『街の座標』

不潔な文体とか評されるらしいが、私には、誰の言うことも聞かない、どいつもこいつも下らない、という厭世感と孤立感が目についた。 「わたしはひとと接して自分にない長所を学ぼうとか、社会経験を積んで人格を磨こうという健気な発想とは無縁だし」「たと…

遠野遥『破局』

「読みやすく」て「クオリティが高い」純文学?として、近年稀に見る作品ではないかと思う。 特に深く考え込まなければ、本当にすらすら読めてしまう。 そういう読み方をしても、普通に面白く読める。 私が思う「クオリティが高い」には以下のような要素があ…

行成薫『名も無き世界のエンドロール』

昔の少年マンガってBLEACHとかD.Graymanとか、荒削りなところあったよなと思う。 本人が楽しんで描いて、自然と出来上がったみたいな要素が好きだった気がする。 最近のマンガとか小説は初めからこうしてこうで終わるって決まってて、綺麗な作品が多くてなん…

小川国夫『想う人』

小川国夫の文章がなんか好きなのは、自分のことばかり書いているからかなと思う。 特に初期の文章が好きなのは、小説技法が熟練する前だから、良くも悪くもストレートなのかもしれない。 「自分のこと」を、「ストレートに」書いたもの。 他には、重苦しい宗…

吉本隆明『吉本隆明初期詩集』

「巡礼歌」とか「エリアンの手記と詩」が好きだ。 エリアンおまえは此の世に生きられない、のところとか 「二人の相違う性が、相寄って長い歳月を歩むということは、そんなに美しくもなく愉しくもなく、又そんなに醜いことでもない平凡なことだ そして平凡な…

フィリップ・スーポー『流れのままに』

HSPという言葉を最近よく聞く。 Highly Sensitive Personで敏感な人。 さらにHSS型HSPというのがいて、刺激を求める癖に人一倍敏感な人。 そういうタイプの人はこう考えると生きやすくなるよ、という情報になるほどと思ったりもするのだ。 こうした道具的な(…

太宰治『人間失格』②

どうにも忘れられない一節がある。 「たとえばって、あなた自身、これからどうする気なんです」 「働いたほうが、いいんですか?」 「いや、あなたの気持は、いったいどうなんです」 「だって、学校へはいるといったって、……」 「そりゃ、お金が要ります。し…