行成薫『名も無き世界のエンドロール』
昔の少年マンガってBLEACHとかD.Graymanとか、荒削りなところあったよなと思う。
本人が楽しんで描いて、自然と出来上がったみたいな要素が好きだった気がする。
最近のマンガとか小説は初めからこうしてこうで終わるって決まってて、綺麗な作品が多くてなんか詰まらん。
もう良い作品の方程式が分かってしまった、みたいな感じもする。
『名も無き世界のエンドロール』はまさに荒削りな作品で、でも1番感動した小説のひとつだ。
退屈で文章が下手にみえる箇所もあるのだが、良い箇所は見違えるように良く、輝いている。
非常に美しくて残酷な話になっている。
主人公は仲間と一緒にいながら、一歩引いて見るような人物で、だからこそ彼が語り手として適任である。
一歩引いて見る癖のある人、世の中の偽善への言い知れぬ怒りを持つ人、きっとこの作品が響くだろう。
つまり、作品に「力」があるのかなと思う。
その切実さが、「巧さ」を超えた魅力になるのだ。
私は「巧さ」が目立つ作品をあまり好きではない。
すごく読みやすいし、伏線も多くて軽めのミステリーとしてシンプルに楽しめる。
映画化されるようだけど、小説で読んだ方がいいんじゃないかなあと思う。