岩橋邦枝『逆光線』、田山花袋『蒲団』
逆光線というタイトルに反骨精神を感じる。これまでの価値観を「逆」にするという意志を感じる。
不倫関係を、初めは男の目線に沿って語られる。途中から「逆」になり、女の目線に沿うようになる。
女性の「主体性確立」というテーマがさりげなく語られる。
女の方で、妻のある男を積極的に誘惑していく。
1956年の作品らしく、読みながらイメージしていたよりも古くて少し驚いた。
当時、驚きを持って迎えられたと書いてあったが、そうだろうなと思った。とても革新的だったはず。
田山花袋『蒲団』(1907年)を読んでいると、少し前まで女性は3つくらいしか表情がなかったのに最近の女性はハイカラで、色んな表情をするから魅力的だ、みたいに書いてあって印象的だった。
女性は子どもを産み育て、家事をするだけでいい(そのためには表情は3つくらいで十分?)、というのが強固だったようで。
『蒲団』に関しては、読みやすくて笑える小説なのに、タイトルに現代的な惹きがなさすぎて読まれてない気もする。
小説家という当時としては超インテリが、自分の恥ずかしい失恋を暴露していて、中年男が少女に恋をする気持ち悪さも全開で、笑える。
これはこれで、漱石や森鴎外の真面目な小説と同時代と思うととても革新的。