続いて光 いくつもの

小川国夫『相良油田』

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私の手元には、小学校のころの集合写真がある。少年らしい無邪気で元気な男の子たちの中で、私は臆病そうに、しかし大人しい子たちには混ざらず、快活な子たちに合わせて背伸びをしている。

高校大学を経て、私は、自分が異性から認められるのだと知った。しかし実は、この臆病な写真の少年こそが今でも私自身なのだと、思ったりする。臆病で弱く、じめじめとした想像ばかり膨らませ、現実の問題に対処できない、そういう自分を見せたくないから、途中で逃げてしまう。未だに、正面から向き合った恋愛をしたことがない。

駄目な自分を見られることと、駄目な相手を見ることを受け入れるまで、私は現実的な恋愛が出来ないだろう。清濁合わせ飲んだ現実を受け入れるのは難しく、地に足のついた友人を見るたび凄いなと思う。そろそろ私も、と思いつつ。

 

 

小川国夫は『東海のほとり』と『相良油田』がとても好きだ。どちらもエディプスコンプレックス的な、既に相手のいる女性への恋心とその相手たる強い男性への憧れ・対抗心、といった状況下の青春小説である。

元々の素質に、「相手のいる女性への恋」という実経験が合わさってのことなのか、これらエディプスコンプレックス的状況下の心理描写にとても共感がわく。

『東海のほとり』は自伝的な作品らしく、そうした「個人的な思い出」を凡人が書こうとするとどうしてもチープなポエムになるのだが、読み返すたびにこれは素晴らしい文体・文章力だなと思わされる。そう、私が感じてたのはそういう事なんだよ、と読むたびに思う。『相良油田』は幻想的な夢の小説で、これまた唯一無二で非常に面白い。

 

 

 

 

 

 

 

 

相良油田」を含んだ短編集