続いて光 いくつもの

小池桂一『ウルトラヘヴン』

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薬物でトリップしてる描写が大半という、他にないマンガである。主人公がトリップして戻って来た時、「え、今までの夢だったの!?」と読者も思わされる。そして「夢にしてはリアルだったけどなあ。本当に夢だったのか?」と、もどかしい気持ちが残る。つまりその時の(トリップから戻ってきた時の)主人公と同じ気持ちにさせられる訳で、上手い作品だなあと思う。

 

小池桂一は夢みたいな描写を続ける一方で、そこに現実的・論理的な肉付けをわすれない。つまり、「これは故障したロボットが見ている夢である」とか「これは他人の脳を移植した人が見ている夢である」とか、夢の外側にひとつ、現実の枠組みをつくる。だからただの変なマンガに留まらず、現実的現象として考察するに値する、説得力のある作品に仕上がる。これまた上手い。

 

ウルトラヘヴン』は3巻で中断しているが、おそらく3巻は著者としても納得いってないんじゃないか。3巻だけ絶版になっているが、わざと重版してないのでは。と邪推している。続きを書けないのは、それが理由のひとつではないかと。まあそこは目をつぶって、1・2巻で未完としても十分楽しめる作品である。小池桂一の他作品はややグロテスクだったり、個人的に危険な臭いを感じているのだが、『ウルトラヘヴン』はわりと大衆ウケすると思う。実際Amazonとかで見ると一番人気で知名度が高そうだし。私は『ヘヴンズドア』の方が好きだけど。→https://kokumura01.hatenablog.com/entry/2020/07/08/041618

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラヘヴン1巻