丸岡大介『カメレオン狂のための戦争学習帳』
教員寮に住む国語教師が、寮内の実情を教育委員会に密告するレポート、という形式で語られていく。
2009年の群像新人文学賞。
この小説は本当に面白い。
小説として一流なんだろうけど、そもそも舞台が学校とかだから取っ付きやすくて、筆運びが軽快な箇所もあるし、ふつうに馬鹿馬鹿しくて笑えたりと、シンプルにおもしろい。
特に評価の固まっていない現代の作家の、短くもない小説を、ちゃんと2回読んだのは初めてかも。
丸岡大介という作家はこれがデビュー作。高い評価を受けていたらしいのだが、何故かこれ以後、短編ひとつしか書いていない。もし次作を書かれることがあれば読みたい。
冒頭部分も良い。
まずは音、続いて光、いくつもの。十代少年集団の運転による違法改造オートバイの十台ほど、彼ら流の≪誰にも縛られたくない≫という例の主張どおり交通法規にも縛られることなくあきらかに制限スピードを越して国道を疾走しながら騒音と排気ガスをまきちらす。それが部屋の中にいても聞こえる。
なんかかっこいい。
最初の文は5・7・5になってて、次の文は「十代」と「十台」が掛かってる(他の人のブログを読んで気づいた)。
古本で探しても高くて、唯一、静岡県に500円だかで売ってる店を見つけた。ネットで注文して送ってもらうかーと考えてたんだけど、たまたまそのとき静岡に旅行してて、しかも居る場所のすぐ近くに店があった。
というちょっとした思い出付き。そこの店主は絵本が好きらしくていろいろ教えてくれた。元気かなあ。