続いて光 いくつもの

短い

短い感想、3つ。

 

①行成薫『名も無き世界のエンドロール』

第25回小説すばる新人賞受賞。

青春モノなんだけど、ただのエンタメ小説ではない。

クソみたいな表現だけど「作者の魂がこもっている」切実な力作。書かれる必然性があった(書かれなければならなかった)作品。

 

読んだ当時、私は現実がうまくいっていなくて、気分が落ち込んでいた。

初めはあまり上手じゃない気がするなあ、って適当に読んでたのに、いつの間にか小説世界にのめり込んで、3人の登場人物に幸せになって欲しいと本気で思っていた。

こんな純粋な感情移入をすることは滅多にない。だからすごい小説だと思う。この切実さというか説得力はどこから来るのだろう。

 

2022/06/15追記

この小説についてはまたちゃんと書くつもり。

 

小野正嗣『みのる、一日』

一読してなんか気に入った。

小野正嗣さんはちょうど1年前くらいに『歓待する文学』というラジオをやっていて、それも面白かった。小野さんの優しさが伝わってきた。

文学に携わる人というのは、こうでなくてはならない、という気がした。私も文学に関することを仕事にしたい、と一瞬思ったが、たぶん違うな、と思ったひとつのきっかけでもあった。私にはもっと俗な生き方が似合う。

 

③高橋麻帆『「高橋麻帆書店」という古書店

龜鳴屋(かめなくや)という金沢の版元の本。オリジナルの本を、各500部ほど限定で作って販売している。

古書店を営む日々のエッセイ的な文章と、実際に取り扱っている商品の図版とで構成されている。

この図版はなかなか綺麗で良かった。15世紀ドイツの木版とか17世紀の植物図鑑とか、初めて見た。版画って綺麗なんやなと思って、それから少し目につくようになった。

こないだ金沢行ったとき、店舗に立ち寄ってみればよかったかなあ。また近いうち行ってみたい。

 

 

 

 

 

 

『名も無き世界のエンドロール』リンク

『みのる、一日』を含む短編集リンク