続いて光 いくつもの

木村友祐『野良ビトたちの燃え上がる肖像』

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短い感想を。ちょいネタバレ。

 

終盤の構成?が面白くて、こういう書き方もアリなのかとびっくりしたのだが。

 

だが、最終的に「敵」みたいな勢力の存在が明確化していく感じが、どうなのかなあと思った。社会の底辺ではないけれど、何かしら日常的に抑圧されてる人たちが、底辺のさらに弱い者たちに、土手から石を投げている。誰が指図したとか明確ではない、社会全体のシステム自体が轟音を上げているような、得体の知れない無力感が描かれていた方が、私にはリアルに思えた。

 

梅崎春生「麵麭の話」が社会そのものの無惨、みたいのを描いてた気がするんだけど、そういうのを一瞬期待してしまった。リハドも「敵」勢力に脅されて凶行に及んだ、じゃなくてリハドのような善意すら悪意に変わる、そういう社会の恐ろしさ、ではダメだったんだろうか。

 

まあたぶん、ダメだったのだろう。作者の意図が私にはなにか、伝わらなかったのだろう。でも私には、この世に「敵」が存在するとは、今のところ思えないのだけれど……。「敵」とかそういう事じゃない、と思うのだけれど。どこに齟齬があるのだろう。とりあえず『イサの氾濫』というこの作者の小説をもう一つ、買ってみる。

 

 

 

 

 

 

 

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